BOOKS

–1984–
BEDTIME STORIES
OSAMU GOODSマザーグースのキャラクターが、9編の楽しい物語の主人公になった短編小説。
秋山道男さん、鈴木海花さん、林真理子さん、酒井チエさん、
安西水丸さん、秋山猛さん、佐々木克彦さんら豪華な作家陣が参加。
夢の中でも幸せな気分になれる本として、ファンなら誰もが枕元に置いていた本。
原田治さんの素敵な挿絵を掲載。

お台所より愛をこめて オールド・マザーグース/酒井 チエ
本格的イタリア料理のひとつ
アンチョヴィ・ソースのスパゲティ
お時間もそろそろ少なくなって参りました。なんですかついついお話が横道に外れてしまいまして、あまり沢山のお料理を御紹介できませんでしたこと、申し訳なく思っております。
それでは最後に、簡単なお昼のための、アンチョヴィ・ソースのスパゲティを御紹介させていただくことにしましょう。皆様、アンチョヴィはお好きかしら。アンチョヴィは瓶詰めもしくは缶詰になったしこいわしの塩油漬けです。食べず嫌いだった方も、ぜひ一度お試し下さいませ。しばらくはこれに「凝ってしまうことうけあい」でございますわ。
まずはパスタから。これは申し上げるまでもございませんが、イタリア製をお買いいただくのが一番でございます。見た目は変わりませんけれど、歯ごたえが断然違います。
最近ではイタリア製の良いパスタもずいぶんと沢山輸入されておりますが、その中でも、わたくしが特においしいと思いますのは次のふたつの銘柄でございます。ひとつはデ・チェッコ、もうひとつはバリッラと言います。そうそう、スピガドーロなどもおいしい銘柄にはいりますわね。
ちょっぴり自慢をさせていただくと……イタリアからみえたお客様に伺いましたところ、わたくしのセレクトいたしました銘柄は、いずれも本格派という折り紙をつけていただきましたのよ。
パスタというのは御存知の通りイタリア麺類の総称でございまして、形や太さなどによってそれぞれ細かく分けて名前がつけられております。ごく一般的に使われておりますスパゲティよりも、こころもち細めのものにスパゲティーニという種類もございますが、わたくしどもではこれが一番のお気入りになっております。
パスタはたっぷりのお湯でかために茹でる、ということについてはもうどなたでも御存事でしょう。要するに麺がのびないうちにいただくということなのですが、これにはもうひとつこつがございます。パスタを茹でることとソース作りとを、同時進行でタイミング良くすること。
(茹でてさましておいたパスタをバターいためして、という方法では、あのしこしことした歯ごたえを楽しむことはできません。)
ですからスパゲティを作るとなると、キッチン中が、それはもうあわただしい雰囲気になりますのよ。ある意味では、食欲をそそる感じと言えるかもしれませんけれど。
テーブルのフォークやお皿は勿論のこと、水切り用のざるなども、必要な物は全て用意しておきます。
それから材料を刻みましょう。にんにくはみじん切り、赤唐辛子は種を取り除いて、ごく細い輪切り、もしくはみじん切りにしておきます。
アンチョヴィは、できれば、中身を平らにのばして並らべてあるほうの缶詰を使いたいと思います。オードブル用などには、ケイパーなどを芯にしてひとつひとつ丸く形作ったものもございますので。缶詰の油は捨てて、アンチョヴィはざくざくっと切っておきましょう。
パセリ少々もみじん切りして下さい。
ぐらぐら煮立ったお湯にお塩を加えます。お塩は塩化ナトリウムだけの化学的なものではく、自然食品、昔ながらの荒塩を使いますといっそうおいしく作ることができます。
ここにスパゲティ、あるいはスパゲティーニを放り込みます。くっつかないように、時々かきまぜてほぐすことをお忘れなく。
こちらを気にかけながら、同時にソースを作ります。フライパンにたっぷりオリーヴ・オイルを入れて熱し、にんにくのみじん切りをいためます。まあなんておいしそうな匂いですこと!
ここに赤唐辛子を加え、さらにアンチョヴィを加えていためます。アンチョヴィは形がくずれても構いません。
パスタのほうは、時々一本すくってみて歯ごたえを確かめてみましょう。かための、良い茹で加減(イタリア語ではアルデンテと申しますそうですが)になりましたら、ざるにあけ、手早く水気を切って下さい。
このままを、すぐに先程の厚いアンチョヴィ・ソールで合えます。手早く合えるだけ、これがかんじんです。いためてはいけません。お皿に盛って、パセリのみじん切りをふりかけましたら、すぐにいただきます。
麺ののびないうちにと思うせいでございましょうか、ついつい食べるのも早くなってしまいます。あまりお行儀の良いことではございませんわね。「おいしかったけれど、あまり急いだのでなんだか食べた気がしないね。」主人がよくそう言って笑いますのよ。
トマトとバジルのサラダやグリーン・サラダなど、生野菜も御一緒にお召し上り下さい。とにかくすぐ出来上りますし、お味も大人好みですので、一度お試しになりますようお勧めいたしますわ。
なおパスタは、乾燥した状態で計りまして、一人前が100g前後といったところでございましょう。
スパゲティはイタリア料理の中ではスープ代わりの一品で、この後にお魚やお肉料理と、サラダ、デザートをいただくことになっております。
ということさえ御存事の上でしたら、普段の簡単なお昼としてこれだけを召し上がられても、全く差しつかえないこととわたくしは思います。